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分散安定性とは?

  固体分散やエマルションなどの分散液において、その分散状態がどの程度の期間安定的に保持されるか、あるいは不安定化がどの程度進むかを示す度合いを意味します。食品・飲料からインクなど工業製品に至るまで多岐に渡る製品に分散液は存在しますが、生産直後の分散状態を示す「分散性」に対して、「分散安定性」は時間を考慮に入れた状態変化を示すものです。

不安定化挙動の種類

粉体やエマルションが分散されている液は永遠に変化しないということはなく、遅かれ早かれ不安定化をしていきます。主な不安定化の挙動として、固体分散体の沈降、エマルションの浮上(クリーミング)など粒子の移動、また分散体の凝集や合一などによる粒子サイズの増大などがあります。

不安定化①

 このような不安定化が起こると物性の変化や見た目の変化、食品や飲料などの場合は味や食感が変わるなど、もともと製品が持っていた性能から変わってしまうことになるので研究現場では安定性を向上させる研究が日々行われています。

不安定化が起こる原因

 粒子の移動(沈降やクリーミング)は粒子と連続層の比重の違いによって重力下で引き起こされるもので、一般的に比重差が大きい場合や連続層の粘度が低い場合、粒子サイズが大きい場合に早まります。また、凝集が起こるとそれにより粒子サイズが大きくなるため、沈降が進みやすくなります。分散体の安定性を向上させるためにはまずどのような不安定化が起こっているのかを知る必要があります。希釈を行うと不安定化の挙動が変わってしまう恐れがあるので、高濃度分散系であっても原液のままで現象を観察する必要があります。

不安定化②

 

このような粒子の時間に伴う沈降やクリーミングの現象、あるいはナノ粒子の粒子サイズ成長度合いの数値化は分散安定性評価装置(タービスキャン)を用いて可能です。

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分散系に存在する粒子の分散状態、あるいは経時変化を粒子径や粒子径分布で評価する場合、目的に応じて装置を選別する必要があります。粒子径の定義から測定装置の選別のヒントは粒子径・分布評価をご参照ください。

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粒子の凝集要因の評価方法の1つとして、ゼータ電位(表面電位)があります。ゼータ電位を測定することによって粒子の表面電位の符号の情報と粒子間静電反発力の指標を得ることができ、その絶対値の大きさで安定性を予測できます。分散系の安定化メカニズムが粒子間静電反発力によるものであれば、ゼータ電位評価をお勧めします。

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ゼータ電位以外に粒子の凝集要因の評価方法として粒子表面の濡れ性があります。分散の処方は同じですが粉体のロット違いによって粉体表面の濡れ性が変ってしまい、結果的に出来上がった分散系の安定性が変わってしまう場合があります。この濡れ性の評価において昨今注目を集めているのはTD-NMR(パルスNMR)を使った評価手法です。TD-NMRは粒子を入れる前の連続相のプロトンの緩和時間と入れた後のサンプルのプロトンの緩和時間から粒子表面に束縛されているプロトンの量を測定します。それによって粒子表面の特性(濡れ性)評価や凝集状態の評価を行うことが出来きます。

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エマルションの安定性の場合は、粒子径やゼータ電位以外に、界面張力や界面粘弾性なども界面膜の安定化に寄与することが知られています。

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微粒子分散系は、粒子の分散・凝集度合いによってプロセスでの流れ特性に影響を与えます。このような分散系の分散・凝集度合い、または、凝集力の度合いはレオロジー評価で数値化可能です。

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