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ジオテキスタイル 耐候性試験

屋外の紫外線や雨水、結露に対して耐候性はありますか?

Geotextile river bank protection

米国耐候性試験機(ウェザーメーター)・腐食試験機メーカーのQ-Lab社はジオテキスタイル材料向けの耐候性試験機器および試験サービスにおいて、世界をリードする存在です。ジオテキスタイル業界では、基本的には地中に埋められるケースが多いのですが、製品が屋外の太陽光にさらされる場面もあり、素材は紫外線によって引っ張り強度を損なうことが知られているため耐候性試験は商品の品質を定めるにあたって非常に重要です。紫外線が照射される条件下ではポリエチレンやポリプロピレンが反応し劣化を起こしやすく、結果として、物性強度の低下や光沢値など見た目の要素が損なわれ、商品としての適性を損ねることにつながります。

ジオテキスタイルサンプルの耐候性を求めるにあたって大きく2つの方法があり、1つはキセノン耐候性試験、もう1つはQUV耐候性試験機を用いた加速化試験になります。本ページではそれぞれにおいて有名な試験規格のであるASTM D4355 Deterioration of Geotextiles by Exposure to Light, Moisture and Heat in a Xenon Arc Type Apparatus 及び ASTM D7238 Effect of Exposure of Unreinforced Polyolefin Geomembrane Using Fluorescent UV Condensation Apparatus について解説をします。

耐候性試験機(ウェザーメーター)での試験について

耐候性試験機(ウェザーメーター)は屋外における太陽光の光と熱、そして結露や降雨からの水の3つの要素を制御し、ある特定の環境をつくりだすことができる装置です。ジオテキスタイル向けの試験規格では2つの試験機を規格化しています。それらはキセノンアーク灯式、紫外線蛍光灯式(別名QUV式)になります。オープンフレームカーボンアーク灯式はこれらの中で最も古い試験機として知られています。光源は100年以上前に発明されたカーボン灯という炭素棒を用いており、それを燃やすことで発光させ、その光でサンプルを劣化させます。この試験機はカーボン灯から発生するすすで光学フィルタや試験槽が汚れてしまったり、カーボン灯は寿命が短いため交換頻度が非常に速くメンテナンスが大変です。現在では欧州・米国をはじめほとんどの国がキセノンアーク式・紫外線蛍光灯式にシフトしています。キセノンアーク式はカーボン灯が使われていた当時に問題のあった「太陽光スペクトルの低い相関性」を解消した試験機になります。光源はキセノンアーク式にモデルチェンジされ、キセノンという元素は発光時に太陽光の紫外線・可視光・IR部を非常によく近似することが知られています。また、キセノンアーク灯にかける電圧を調整することができ、光の照度もコントロールすることができるようになりました。本規格では屋外暴露試験方法に合わせた光学フィルタを規格化しており、直接屋外暴露法の場合はデイライトフィルタ、屋内環境のアンダーグラス試験の場合には窓ガラスフィルタを使用し、それぞれの照度設定値も異なっております。

ASTM D4355試験規格について

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Q-SUNキセノン促進耐候性試験機(キセノンウェザーメーター)での試験の様子です。フラットトレイタイプのため立体物サンプルもそのままの状態で容易に試験することができます。ASTM D4355に適合しており、120分の試験サイクルが組まれています。まず照射サイクル90分から始まり、照度は狭帯域の0.35W/m2 (@340nm)、ブラックパネル温度65℃、槽内湿度50%と定められています。そのあとに30分間の照射+スプレー(水噴射)サイクルが組まれています。この試験規格の特徴的な部分としては、照度は比較的弱めであり、スプレーサイクルが通常の試験方法と比べて約2倍の時間を要求しています。その理由としてはジオテキスタイルは常に強い太陽光に曝され続ける環境下では使われませんが、雨や湿度・結露に曝され、濡れている時間が長いです。よって、スプレー時間を長くしサンプルを十分に濡らすことを再現しようとしています。推奨試験時間は最長でも500時間と短く、そのあとに引張試験を実施して劣化後の強度保持率を試験します。

フラットトレイ式キセノン試験機Q-SUN(キセノンウェザーメーター)はこちら

ASTM D7238試験規格について

紫外線蛍光灯式は紫外線のみを照射する蛍光灯を用いた試験機です。別名QUV試験機と呼ばれています。蛍光灯はキセノンアーク灯と同様に、電圧調整ができるため精確な照度コントロールが可能です。紫外線蛍光灯の場合はランプが二種類あり、UVA-340ランプとUVB-313ランプの二種類規格化されています。UVA-340ランプは屋外の太陽光を非常によく近似するため、相関性を求める試験においては最適です。一方、UVB-313ランプの場合は自然の太陽光からは地表に照射されないような強力なUVB波を照射します。よって、このランプでは高い劣化促進性を求める試験においては最適です。QUV試験機で最も特徴的な試験方法として結露試験があります。QUVは試験機下部の槽内に水をためることができ、ヒーターなどでその水を熱して蒸気化させます。その蒸気は結露としてサンプル表面に付着し、酸化・加水分解などの化学反応を促進させます。結露試験は紫外線照射から得られる劣化パターンと異なる結果を生みやすいことが知られており、主にクラッキング、クレージング、チョーキングなどの物性変化をもたらすことが知られています。

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QUV紫外線蛍光ランプ式耐候性試験機でのサンプル試験の様子です。ASTM D7238に適合しており、24時間の試験サイクルが組まれています。まず照射サイクル20時間から始まり、ランプの種類はUVA-340, 照度は0.78W/m2 (@340nm)、ブラックパネル温度75℃と定められています。そのあとに4時間の結露サイクルが組まれています。この試験規格の特徴的な部分としては、照度はキセノン試験機と比べると比較的強めであり、スプレーではなく結露試験を要求しています。その理由としては本規格はジオテキスタイルとしても使えるのですが、ジオメンブレン関連で用いられることも多く、ジオメンブレンは遮水シートなどのエラストマー関連の素材でできていることが多いです。ジオテキスタイルなどのPP系の繊維状に加工されたものよりも比較的強い耐候性が求められるため、照度は強く、またサンプルを十分に濡らすために結露試験も過酷な環境で行われます。推奨試験時間は最長で2400時間とやはり長期であり、そのあとに引張試験を実施して劣化後の強度保持率の試験及び、エラストマーは熱可塑性を示すためASTM D1238に準拠してメルトインデックスを測定します。

紫外線蛍光ランプ式促進耐候性試験機QUVについてはこちら

 

 

試験機だけの試験ではなく、実際に屋外ではどのような劣化を示すのか知るために、実地で試験することも非常に重要です。そのような試験方法は屋外暴露試験方法として知られており、真実の答えに最も精確にたどり着く方法です。

屋外暴露試験について

屋外暴露試験は実際に屋外にサンプルを曝しておくことで、実環境下で引きおこるであろう劣化を再現することが目的です。非常に時間がかかる試験ですが、耐候性を求めるにあたって最も精確な方法のためすべての試験片を試験することはなくても、リファレンスサンプルのみのデータだけでも得ることができると製品寿命予測にあたって非常に有用です。屋外に曝されるサンプルに対して加速化できる試験方法として太陽追跡集光暴露試験があります。これは特殊な暴露台になっておりフレネル反射鏡が太陽光を集光し、通常の暴露試験と比べて照度の高い環境を再現します。高照度な自然界の太陽光での試験となるため、劣化の加速化が狙える試験方法です。Q-Lab社ではフロリダ・アリゾナに屋外暴露試験場を有しており、世界中から依頼のある何万もの試験片が暴露試験されています。特にアリゾナ試験場では太陽追跡集光暴露試験装置Q-Tracがあり、非常に人気です。

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