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レーザー回折・散乱式粒子径測定とは?

レーザー回折・散乱式は、数ある粒子径分布測定装置の中でも最も汎用的に使われている原理のひとつです。その理由として、測定レンジがサブミクロンからミリと広いこと、湿式のみでなく乾式でも測定が可能、広い試料濃度範囲で測定できる、操作が煩雑でないなどが挙げられます。

 

<原理>

測定原理は、レーザー光の散乱光強度の角度パターン(散乱パターン)が粒子の大きさによって異なることに基づいています。

放射されたレーザービームはフィルタリングの後拡張され、コリメーターを通して平行ビームになります。粒子がない場合(上図)、平行ビームはフーリエレンズを通過し、焦点面に収束して小さな明るいスポット(焦点)を形成します。平行ビーム上に粒子が存在すると(下図)、レーザー光は粒子によって散乱され、光の一部は光軸に対してある角度で外側に向かいます。

 

レーザー原理

理論と実験の両方によって、大きな粒子ではレーザー光の散乱角が小さく、小さな粒子では散乱角が大きいことが実証されています。

粒子による光散乱の角度分布(散乱パターン)を解析することで粒子径分布を得ることができます。実際の粒子径測定では、粒子の大きさは均一ではなく、異なる大きさの粒子が混ざっているため得られる粒子群の散乱パターンは個々の粒子による散乱パターンの総和となります。

 

散乱パターンを計測するために検出器はさまざまな角度の光を検知できるよう工夫されています。一般的に、セルに対して前方および側方、後方に検出器が配置されています。

フーリエ光学系は、平行照射光中に粒子を導入し、散乱光を集光レンズで検出器に導きます。逆フーリエ光学系は、粒子は平行照射光レンズの後ろにあり、散乱光は直接検出器に入ります。より性能を上げるために、フーリエ光学系と逆フーリエ光学系を組み合わせたり、波長の異なる複数の光源を搭載している装置もあります。

測定された散乱パターンとよく一致する、理論的に計算した粒子径における散乱パターンの重ね合わせが粒子径分布として得られます。

フーリエ逆フーリエ

 

<粒子径分布を求めるための光散乱理論>

ミー(Mie)散乱理論は、均一で滑らかな球形粒子の散乱パターンでサブミクロンからミリの粒子に適用できます。粒子と溶媒の屈折率を考慮しており、さまざまな光学特性をもつ試料の正確な分析を提供します。

フラウンフォーファ(Fraunhoher)回折は、ミー散乱の簡略版で粒子と溶媒の屈折率は考慮されていません。25μmを超える粒子の回折結果を正確に表すことができますが、それ未満の粒子では誤差が発生し、粒子が小さいほど実際の粒子サイズとの逸脱は大きくなります。

 

<試料の屈折率が粒子径決定に及ぼす影響>

サブミクロンやナノサイズの粉末材料は、現代の粉末材料の研究と生産のトレンドです。これらの粒子を測定する要件を満たすため、レーザー粒子径測定装置の測定範囲はサブミクロンやナノメートルに向けて開発されています。従って、最新の高性能レーザー粒子径測定装置の測定限界は20 nmあるいは10 nmにも達しています。

試料の屈折率(吸収率を含む)はミー散乱理論の精密な解析にとって重要なパラメータです。間違った屈折率を使用すると、誤った測定結果につながります。

ますます多くの新しい材料、合成材料および複合材料が開発されているので、これらの材料の屈折率を測定することは困難です。この問題を解決するため、Bettersize社は屈折率測定技術を開発し、Bettersizerシリーズに適用しました。粒子径測定の前に、屈折率と吸収率を最初に測定し、新しい材料に対する粒子径測定結果の精度を保証します。

 

<粒子径の測定下限値>

レーザー回折式はミー散乱理論に基づいています。ミー散乱理論は、波長 λのレーザー光が、直径 d、屈折率n、吸収率mの球体によって散乱されたときの散乱光強度の空間分布を散乱角 θの関数として数学的に記述します。この関数は「散乱スペクトル」とも呼ばれます。

 

ミー散乱理論に基づいて、大きな粒子では前方散乱光が強く、後方散乱光は弱くなります。小さな粒子では、前方散乱光は弱く、後方散乱光は強くなります。下の図は、大中小の粒子に対する散乱の概略を示しています。

レーザー粒子径測定装置は、光検出器アレイを使用して、異なる角度からの散乱スペクトルを検出し、粒子径を決定します。ある粒子について、このタイプの散乱スペクトルは安定な空間分布の特性を示します。従って、ミー散乱理論を用いたレーザー粒子径測定装置は、静的レーザー粒子径測定装置とも呼ばれます。

 

ミー散乱理論によれば、粒子が十分に小さい場合(例えば、レーザー波長の< 1/10)、光強度分布は2つの対称な円((1)d<<λ)のように見え、レイリー散乱と呼ばれます。レイリー散乱が発生する最大粒子径は、レーザー粒子径測定における測定下限です。レーザー粒子径測定装置の下限はレーザー波長にも関係します。波長が長いほど、下限値が大きくなります。研究に基づき、前方散乱光と後方散乱光の両方を測定し、差分散乱スペクトルを認識できるレーザー粒子径測定装置については、下限は赤色レーザー(波長635nm)で20nm、緑色レーザー(波長532nm)で10nmです。

 

<半導体レーザーの長所と短所>

半導体レーザーは、レーザーダイオード(LD)とも呼ばれ、1980年代の半導体物理学における最新の開発の一つです。半導体レーザーの利点は、容量が小さく、軽量で、信頼性が高く、耐用年数が長く、消費電力が少ないことです。さらに、半導体レーザーは低電圧定電流電源モードを採用しているため、停電率が低く、安全に動作し、メンテナンスコストも低く抑えられます。現在、半導体レーザーが最もポピュラーなレーザーです。それは、いくつかの重要なアプリケーションで、他のタイプのレーザーに徐々に取って代わりました。また、半導体レーザーには、波長の長い赤色レーザーや、波長の短い緑色、青色レーザーなど多くの種類があり、レーザー回折式粒子径測定装置の測定範囲の拡大や測定精度の向上に利用できます。

初期の半導体レーザーのレーザー性能は温度の影響を大きく受け、ビームの発散角も大きかったため(20度以下)、指向性、単色性、コヒーレンスでの性能は理想的ではありませんでした。半導体レーザー技術の急速な進歩により、その性能は非常に高いレベルに達し、レーザービームの品質も大幅に向上しています。従って、半導体レーザーは、世界中のほとんどのメーカーのレーザー回折式粒子径測定装置においてレーザー源として使用されています。

 

半導体レーザーをレーザー源として使用する場合、安定した出力を確保するために、制御電気回路に定電流と定温が条件になります。

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