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ASTM D7869 耐候性試験規格

外装用コーティングの促進耐候性試験は50年以上もの間長く研究されています。その研究は、実験室での短時間の試験で、屋外に曝されるコーティングの寿命を精確に予測することを達成するために行われています。 今までも様々な試験が行われてきており、産業に対して耐候性の予測においての価値を生み出してきました。ただしその一方で、今日の技術力の高い長寿命なコーティング剤においては、耐候性の将来予測が難しいということもわかってきました。そのような中で、屋外暴露との精確な相関性がとれ、尚且つ促進性も高めた2013年にASTM D7869試験規格が策定されました。

この規格は、1980年代に研究された自動車用コーティング材向けの試験規格SAE J2527とも関連性があります。当時、SAE J2527は数ある耐候性試験規格の中で、最も屋外との相関性が取れると評価されていました。なぜなら、それまでは耐候性試験において照射量や照度などの光のパラメーターにフォーカスされ続けていましたが、業界で初めて光、水、熱の3要素すべてに着目した研究が行われたからです。この3要素は屋外環境においては、太陽光、降雨、湿度、気温、表面温度などによりサンプルの劣化に起因するような影響を与えます。SAE J2527ではフロリダ屋外暴露試験結果と比較して光沢低下(曇り)は良い相関性を示しましたが、それ以外の物性変化や光酸化からの劣化は精確に再現することができませんでした。最新のASTM D7869では光源スペクトル、サンプル表面温度、サンプルが劣化を示す最低吸水量などを徹底的に見直し、より精確な結果をもたらすように研究されました。

1.光源スペクトルについて

実際のフロリダでの太陽光スペクトルを観測し直し、自然界の太陽光により近い波形を持たせることを目的に、ASTM D7869専用の光学フィルタDaylight-Fフィルタが規格化されました。

スペクトル

2.サンプル表面温度について

今までの代表的な耐候性試験規格において、ブラックパネル63℃が一般的な値でしたがこれは100年前に規定化されてからそのまま引き継がれていました。この温度は従来の温度調整機能が搭載される前のカーボンアーク式の試験機の構造に起因するもので、屋外との相関性を高める研究においては何の裏付けもない値です。

ASTM D7869では実環境で曝されるであろう最高温度を超えず、現実的で促進性を高められる温度が研究され策定されています。

3.サンプルが劣化を示す最低吸水量

ASTM D7869において、従来の試験規格と比較した際に最も特徴的なパラメーターはスプレーの水量です。ASTM D7869は耐候性試験規格において初めてスプレー水量を規定化させています。その吸水量はサンプルにどれだけ吸水させれば加水分解などの水が起因する劣化が引き起こるか、フロリダにて何百ものサンプル試験で研究され、検証されました。

結露例

屋外に曝されるサンプルは結露や湿度で想像以上に表面が濡れており、実際にQ-Lab社所有のフロリダ屋外暴露試験場で一日に何グラム濡れるか測定されました。また、サンプルを十分に吸水させて屋外との相関性がある劣化を引き起こすには最低でも何グラム必要なのか、研究及び検証もされました。

ASTM D7869ではサンプルにしっかりと吸水させ、屋外暴露との相関がとれるためにスプレー水量を校正することを規格化しています。Q-Lab社取扱いのオリジナルスポンジキットでスプレー水量を測定できるようになっています。

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ASTM D7869試験規格では試験サンプルのリポジショニングについても推奨記載があります。Q-Lab社のフラットトレイ式キセノン試験機Q-SUNではサンプルの移動がドラム式より実施しやすいデザインになっています。

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ASTM D7869試験用 キセノン耐候性試験機Q-SUN

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装置の詳しい情報について

試験規格策定時には様々な検証が必要になりましたが、それはQ-Lab社所有の世界最大のフロリダ屋外暴露試験場で行われました。

暴露

弊社ではフロリダ屋外暴露試験の受託窓口を行っております。

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