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酸素・CO2・pHの光学式測定の原理

光学ケミカルセンサを利用した酸素濃度計について

一般に特定波長の光を照射すると蛍光を発生するルテニウム金属錯体や多環式芳香族炭化水素などの蛍光体は、酸素分子との衝突によるクエンチング現象 が認められる。これは、基底状態にある三重項酸素が、蛍光体との衝突により蛍光エネルギーを吸収し励起状態の一重項酸素となるためである。この消光現象を センサとして応用した酸素濃濃度計が市販されており、飲料、食品などの他、生体中の酸素濃度モニターなどの用途で需要が拡大しつつある。

原理、理論

図1 酸素によるクエンチング

img01図1は蛍光消失の過程を示した模式図である。酸素濃度と蛍光強度、蛍光寿命の関係は、下記のStern-Volmerの等式で表される。

Io/I=τo/τ=1+Ksv・[O2]
I=f ([O2])
τ=f ([O2])

ここで、
I:酸素存在下での蛍光強度   Io:酸素非存在下での蛍光強度
τ:酸素存在下での蛍光消失時間   τo:酸素非存在下での蛍光消失時間
Ksv:Stern-Volmer定数

 

図2  酸素濃度と蛍光強度、蛍光消失時間の関係

img02図2は、存在する酸素の濃度と蛍光強度比、蛍光消失時間非をプロットしたものである。このように、蛍光強度変化、蛍光寿命から酸素濃度を求めることができる光学ケミカルセンサには下記のような利点が挙げられる。

測定に際して酸素を消費しない。
試料の流速に影響を受けない。
乾燥ガス中の酸素濃度の測定が可能。
電気的干渉や磁界の影響を受けない。
電極法に比較して感度が高い。
長期的に安定で信号のドリフトが少ない。
センサ材料を独立して試料中に置くことができる。
電極法得られる信号は電流値のみであるが、光ファイバーにより蛍光強度、波長分布、旋光、消失時間、蛍光遅延などの多くの情報を得ることができる。

酸素濃度計の構成

図3 独国プレセンス社酸素濃度計Fiboxの構成

img03図3に光学ケミカルセンサを使用した独国プレセンス社製酸素濃度計の一例をあげる。この一例は、オプティカルファイバーの先端にセンサ材料が固定さ れている方式である。センサは、酸素の存在により波長、蛍光寿命などの蛍光特性が変化する。酸素濃度計は光源、センサ部、信号を伝えるファイバーケーブ ル、フォトディテクター、演算回路、電源回路、コンピューターからなる。

酸素センサの濃度計への応用

酸素センサの濃度計への応用には、通常の光ファイバーの先端にセンサ材料をコーティングし試料中に浸漬する方法の他、下記の応用が実用化されている。

微小ニードルファイバータイプ

img04先端を数マイクロメートルオーダーまで小さくできるので、生体試料中などの微小領域の酸素濃度測定が可能。通常、注射針の中にファイバーを入れて針を挿入し使用する。

ドットタイプ

img05センサ材料を直径5mmのポリエステルなどの樹脂やガラス材シートにコーティングしたものを瓶やペットボトルの容器中に貼り付けリアルタイプで連続的に酸素濃度をモニターする。

フロースルーセルタイプ

img06配管中の液体の酸素濃度をモニターするもので、センサ材料がティーの中に埋め込まれている。

マイクロプレートタイプ

img0796孔のマイクロプレートの底面にセンサ材がコーティングされており、市販の蛍光リーダーを使用して底面から紫外光を照射し、蛍光強度をモニターする。得られた蛍光強度とリファレンス光の強度比から酸素濃度を計算する。

この技術を応用したセンサー