2026年9月28日 バリア性評価とは?包装・フィルムの品質を左右する酸素・水蒸気・ガス透過性の基礎 評価原理 試験規格 ガスバリア測定 INDEX 包装材料の「バリア性」は、食品や医薬品などの品質保持、賞味期限・使用期限の設計、包装材料の選定に関わる重要な性能です。本記事では、バリア性評価の基本から、酸素透過率(OTR)、水蒸気透過率(WVTR)、ガス透過率(GTR)の違い、代表的な測定方法、装置選定の考え方までをわかりやすく解説します。 バリア性評価の基礎知識 バリア性とは? バリア性とは、フィルム、シート、包装容器などの材料が、酸素、水蒸気、二酸化炭素などの物質をどの程度通しにくいかを示す性能です。一般に、材料を透過する物質の量が少ないほど「バリア性が高い」、透過する量が多いほど「バリア性が低い」と表現します。 バリア性能は主に透過率によって評価されます。バリア性と透過性は表裏の関係にあり、高いバリア性は低い透過性を意味し、低いバリア性は高い透過性を意味します。 バリア性の基本原理 一般的な緻密な高分子フィルムでは、酸素や水蒸気などの分子が材料を通過する現象は「溶解・拡散モデル」で説明できます。材料が対象分子を取り込みにくい、または材料内部で対象分子が移動しにくいほど、透過性は低くなり、バリア性は高くなります。 まず、透過分子が高濃度側のフィルム表面に到達し、材料へ収着・溶解します。次に、材料の両側にある濃度差または分圧差を駆動力として、分子が高分子内部を低濃度側へ拡散します。最後に、反対側の表面から脱着します。定常状態に達した後の単位時間・単位面積あたりの透過量を、透過率として評価します。 この透過率に関する基本的な考え方として、以下の公式が用いられます。 P=D×S P:ガス透過係数 D:拡散係数 S:溶解度係数 D(拡散係数)は材料内部をどの程度移動しやすいか、S(溶解度係数)は対象分子が材料へどの程度溶け込みやすいかを表します。したがって、対象分子が溶け込みにくいこと、材料内部を移動しにくいことの双方が高いバリア性につながります。 バリア性評価を必要とする業界とその目的 酸素、水蒸気、二酸化炭素などのガスは、多くの製品において品質低下や性能劣化の原因となります。そのため、製品の品質維持や保存性向上を目的として、フィルムや包装材料のバリア性能を評価することが重要です。 バリア性評価は食品包装だけでなく、医薬品、化粧品、電子材料、建築材料など、さまざまな業界で利用されています 。 食品業界 酸化防止、香気保持、鮮度維持、賞味期限延長を目的として利用されます。近年では真空包装やMAP包装(ガス置換包装)の普及により、酸素だけでなく二酸化炭素や窒素の透過特性評価も重要になっています。 医薬品・化粧品業界 有効成分の保護、酸化防止、吸湿防止、香りの保持を目的として利用されます。包装材料のバリア性能は、製品の保存安定性や品質保証に直結する重要な評価項目です。 繊維・サニタリー業界 防水性と透湿性のバランスを評価するために利用されます。アウトドアウェアや紙おむつ、生理用品などでは、液体は通さず水蒸気は適度に透過させる性能が求められます。 建築材料業界 防湿性能や結露対策を目的として利用されます。建築用フィルムや防水シートでは、水の侵入防止と水蒸気の放出を両立する性能が求められます。 電子材料業界 有機EL(OLED)、太陽電池、電池材料、半導体関連材料などでは、酸素や水分の侵入が性能低下や寿命短縮の原因となるため、極めて高いバリア性能が必要とされます。 バリア性と透過性を左右する主な要因 材料のバリア性能は、材料そのものの特性だけで決まるわけではありません。同じフィルムであっても、材質、温度、湿度、積層加工状態などによって透過率は大きく変化します。そのため、バリア性評価では測定値だけでなく、どのような条件で試験を行ったのかを正しく管理することが重要です。 材料 バリア性に最も大きな影響を与える要因の一つが材料構造です。一般的に、ガス分子や水蒸気分子が通過しにくい構造を持つ材料ほど高いバリア性能を示します。例えば包装材料では、下記に示すものなどが高バリア材料として広く利用されております。 EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体) PVDC ナイロン アルミ箔 アルミ蒸着フィルム 酸化アルミ蒸着フィルム(AlOx) 酸化ケイ素蒸着フィルム(SiOx) 特にアルミ箔はガスや水蒸気をほぼ完全に遮断できるため、食品包装や医薬品包装などで優れたバリア材料として使用されています。一方で、透明性や柔軟性が求められる用途では、蒸着膜や多層フィルムが多く採用されています。 温度 温度は透過率に大きな影響を与えます。一般的に温度が高くなると、 ・分子運動が活発になる・高分子鎖の運動性が高まる ため、ガスや水蒸気は透過しやすくなります。 そのため試験温度が異なると、同じ材料でも結果が大きく変わる場合があります。実使用環境を想定した温度条件での評価が重要です。 湿度 湿度もバリア性能を大きく左右する要因です。特にEVOHのような親水性材料では、水分を吸収することで材料内部の分子構造が変化し、酸素透過率が上昇することがあります。バリア性能を正しく比較するためには、温度と湿度を適切に制御した測定が不可欠です。 多層構造・蒸着処理 実際の包装材料では、単層フィルムよりも多層フィルムが多く使用されています。例えば、PET / Al蒸着 / PEのような構成では、 PET:機械強度蒸着層:バリア性PE:シール性 というように、それぞれ異なる役割を持っています。バリア性評価は単層材料の性能確認だけでなく、多層構造全体としての性能評価にも利用されます。 代表的なバリア性評価方法 バリア性評価では、用途や対象物質に応じて異なる評価方法が用いられます。包装材料やフィルムの評価では、主に 酸素透過率(OTR) 水蒸気透過率(WVTR) ガス透過率(GTR) の3つが代表的な指標として利用されています。 酸素透過率測定(OTR) OTR(Oxygen Transmission Rate)は、一定の温度・湿度条件下において、単位時間あたりに試験片を透過する酸素量を表す指標です。食品包装では、酸素による酸化や風味劣化を防ぐことが重要であるため、最も広く利用されているバリア性評価方法の一つです。 一般的には等圧法(クーロメトリック法)による測定が広く利用されています。 主な準拠規格:JIS K 7126-2、ISO 15105-2、ASTM D3985 水蒸気透過率測定(WVTR) WVTR(Water Vapor Transmission Rate)は、一定条件下において、試験片を透過する水蒸気量を表す指標です。食品、医薬品、電子材料などでは、水分の侵入や放出が品質や性能に大きく影響するため、重要な評価項目となっています。目的に応じてターゲットとする透過率が大きく異なり、それに応じた測定方式を選ぶ必要があります。 主な測定方式:カップ法、赤外線センサー法、電解センサー法主な準拠規格:ASTM F1249、ISO 15106、JIS Z0208 ガス透過率測定(GTR) GTR(Gas Transmission Rate)は、酸素以外を含む各種ガスの透過率を評価する方法です。主な対象ガスとして、 二酸化炭素(CO₂) 窒素(N₂) ヘリウム(He) 水素(H₂) 空気 などがあります。特に研究開発や特殊包装用途では、酸素透過率だけではなく、個々のガスに対する透過特性を評価することが重要です。 主な用途:MAP包装(ガス置換包装)、真空包装、ゴム・タイヤ材料、電子材料、新規材料開発、研究開発(R&D 圧力測定法(差圧法) GTR測定では、一般的に差圧法(圧力測定法)が用いられます。試験片の一方を高圧側、もう一方を低圧側(真空側)とし、試験片を透過したガスによる圧力変化を測定することでガス透過率を求めます。この方式は酸素だけでなく、さまざまなガスの評価が可能であり、 ・透過係数(P)・拡散係数(D)・溶解度係数(S) などの材料特性評価にも利用できることから、研究開発や材料解析分野で広く採用されています。 関連装置のご紹介:Labthink(ラボシンク)社製バリア評価装置 三洋貿易では、世界中の包装材料メーカー、食品・医薬品企業、研究機関で豊富な導入実績を持つLabthink(ラボシンク)社のガスバリア・酸素バリア評価装置を取り扱っています。 JIS、ISO、ASTMなどの各種国際規格への完全準拠はもちろん、フィルム(平膜)から実際の完成パッケージ(容器)測定まで、お客様の評価目的に合わせた最適なソリューションを優れたコストパフォーマンスでご提案します。 主なラインナップと特徴 2大測定方式への対応: グローバルスタンダードである「等圧法(クーロメトリック法)」から、多ガス対応の「差圧法」まで、多様なモデルを展開。 高効率な多検体同時測定: 基本3セル、最大6セルの同時測定に対応。試験のスループット(処理能力)を大幅に向上させつつ、導入しやすい合理的で高いコストパフォーマンスを実現。 パッケージ(容器)試験対応: 専用アタッチメントにより、ボトル、パウチ、キャップ付き容器などの最終形態でのバリア性評価が可能。 各種国際規格への完全準拠: JIS、ISO、ASTMなどの規格に適合した確かなデータ信頼性。 高いデータ相関性: グローバル市場で広く普及している従来の標準的なバリア測定器とのデータ相関性も確認されており、現行機からのスムーズな移行・乗換が可能です。 装置一覧を見る 関連するコンテンツ 透過率(バリア性:酸素、水蒸気)評価関連規格 水蒸気透過率(WVTR)とは?意味、測定原理、主要な試験規格までわかりやすく解説 酸素透過率(OTR)とは?意味、測定原理、主要な試験規格までわかりやすく解説 関連製品 Labthink社製品一覧 シェア ツイート