技術情報|三洋貿易株式会社 科学機器部

Permeation Cell OTRを使用したバリア材料の酸素透過率測定

作成者: 三洋貿易科学機器部|2026年5月22日

合成材料の酸素透過性を評価するための新しい測定システムが開発されました。本システムは、従来使用されてきた電気化学式センサーや圧力法(バロメトリック)センサーとは異なり、光学式測定を目的として設計されています。

極微量の酸素濃度を検出するために、化学発光型の光学センサーと Fibox 4 trace を組み合わせて使用し、新しい測定システムの妥当性を検証しました。
既存センサーに加え、複数種類のセンサー材料を評価し、高バリア材料の透過測定に適した、より低い検出限界を持つ酸素センサーの開発を進めました。
その結果、PSt9 と呼ばれる新しいセンサータイプと測定セルの組み合わせは、技術用途における簡便かつ低コストな透過測定手法として有望であることが示されました。

はじめに

特定の合成材料における酸素透過率を測定することは、製品の保存期間延長や、技術用途における機能性向上につながります。
透過測定を容易に行える測定装置の開発は、大きな技術的進歩になると考えられます。
食品用途では、透過測定システムは
0.05~2000 cm³/(m²·d·bar)
の測定範囲をカバーできる必要があります。
一方、LEDディスプレイ、太陽電池モジュール、真空断熱パネルのような技術用途では、
10⁻³ cm³/(m²·d·bar)
あるいは有機ELディスプレイや有機太陽電池用途では
10⁻⁶ cm³/(m²·d·bar)
という、さらに低い測定限界が要求されます。
本研究の目的は、専門的な装置や熟練した人員を必要とせず、かつ従来法と同等またはそれ以上の精度で透過測定が可能なシステムを開発することでした。
そのため、ステンレス鋼製で高い気密性を有する新しい測定セルを設計しました。
透過測定には、PreSens 社製 Fibox 4 trace と化学光学式センサーを採用しました。
さらに、高バリアフィルムや包装材料にも適用可能とするため、より低い酸素検出限界を持つ新しいセンサー材料を評価しました。
図1:測定システムの構成
2室構造の新型測定セル(各チャンバーに2つのガス接続口)。
上部チャンバーにセンサースポットを設置し、ポリマー光ファイバーを介して Fibox 4 trace で読み取ります。

実験方法

本実験では、内容積の異なる 16種類の測定セルを使用しました。
評価対象のフィルム試料(バリア性能評価材料)は、測定セルの上部・下部チャンバーの間に固定しました。
各チャンバーには2つのガス接続口があり、最初に両チャンバーを窒素でフラッシング(ゼロ調整)した後、下部チャンバーに酸素を導入しました。
上部チャンバーには、透過測定用として化学光学式センサースポット(PreSens社製)を設置しました。
センサータイプ PSt6 は、シリコーンマトリックス中に酸素感応性色素を分散させたものです。
PSt6 センサーのガス中酸素検出下限は 0.0025%(25 ppm)であり、これは一般的な既存の測定システムと同等、あるいはそれ以上の性能です。
しかし、高バリア材料の透過測定には、さらに低い検出限界が必要です。
そこで、酸素透過率の高い複数のポリマーおよび複数種類の酸素指示性色素を評価し、新しい高感度化学光学式センサーメンブレンを開発しました。
測定システムの妥当性確認には、100 µm 厚 PET フィルム(HOSTAPHAN® RN 100)を標準試料として使用しました。

測定結果(典型的なものを抜粋)

ゼロ測定中、5日間で酸素分圧は 0~0.01 hPa 増加しました。
これは、0~0.03 cm³/(m²·d·bar) に相当するゼロ値です。
酸素分圧は時間とともに、約40 hPa までほぼ線形に増加しました(図2参照)。
理想気体の状態方程式を適用し、測定温度を考慮することで、



上部チャンバー体積 V_cell、透過面積 A、分圧増加量から酸素透過率(OTR)を算出しました。





ゼロ値 0.03 cm³(STP)/(m²·d·bar) を差し引いた結果、
この 100 µm PET フィルム(HOSTAPHAN® RN 100)の酸素透過率は
12.78 cm³(STP)/(m²·d·bar) でした。
図2:100 µm PET フィルム(HOSTAPHAN® RN 100)透過測定時の酸素分圧変化
高バリアフィルムの測定では、20日経過しても酸素分圧の変化が検出されず、ゼロ値は 0.01 cm³/(m²·d·bar) 未満である可能性が示されました。

システムの妥当性評価

PSt6 センサーを用いて、100 µm PET フィルム(HOSTAPHAN® RN 100)の基準測定を実施しました。
100回以上の測定結果から、このフィルムの酸素透過率は
12.26~14.10 (cm³(STP)·100 µm)/(m²·d·bar)(23℃)
の範囲であることが知られています。新たに開発されたシステムで測定した値は、すべてこの範囲内に収まりました(表1参照)。
低いゼロ値および基準フィルムでの正確な測定結果から、新システムの高い精度が確認されました。

測定レンジ

PSt9 センサーの測定レンジは
0~1000 ppm、
検出下限は 0.5 ppm(ガス中酸素)です。

 1 異なる測定セルにおける、100 µm厚PET標準フィルム(HOSTAPHAN® RN 100)の酸素透過率

まとめ

この新しい測定システムと PSt9 センサーは、重要な合成材料の酸素透過率を評価するための、簡便かつコスト効率の高い手法となり得ます。

出典

PreSens Application note
Development of a New Highly Sensitive Sensor for Permeation Measurement

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    OTR-PSt9:超微量酸素測定(高バリア材料評価)
    *PSt9の場合、酸素フリー環境(窒素 6.0)と、100~200 ppmv の気相酸素濃度範囲に設定した第2校正点による2点校正が必要です。