油脂の酸化による変色や風味低下、医薬品の有効成分失活、有機ELディスプレイや電池材料の機能低下など、大気中に存在する酸素は、多くの製品において品質維持や製品寿命を阻害する最大の要因となります。これら「酸素による劣化」を防ぐ性能を定量化した最も重要な指標が「酸素透過率(OTR:Oxygen Transmission Rate)」です。
本ページでは、製品の長期保存(ロングライフ化)や高度な品質管理に欠かせない酸素透過率(OTR)の基本定義から、等圧法や差圧法といった主要な測定原理、JIS/ASTM/ISOなどの国際規格までを網羅的に解説します。
酸素透過率(OTR:Oxygen Transmission Rate)とは、一定の温度・湿度・圧力差の条件下において、指定の膜材料を24時間あたりに透過する酸素ガスの体積(量)を表した指標です。
一般的にcm3/(m2・day・atm)(1気圧の酸素圧差のもと、24時間あたりに1m2を透過する酸素の体積cm3)という単位で表記されます。
大気中に約21%含まれる酸素は高い反応性を持ち、多くの物質と結びついて不可逆的な品質劣化(酸化)を引き起こします。そのため、製品のシェルフライフ(賞味・消費・使用期限)を最大化する上で、OTR評価は不可欠なプロセスです。
なお、生鮮野菜や果実向けのMA(Modified Atmosphere)包装においては、逆に「適度な酸素透過性」を持たせて青果物の呼吸を維持させる「酸素透過制御」の評価にもOTR測定が利用されます。
酸素透過率を正しく管理するためには、素材そのものの性能評価に加え、最終製品の形状での評価が不可欠です。
フィルム単体で優れた酸素遮断性を示していても、絞り成型時の局所的な肉薄化や、ヒートシール部の微小な隙間(マイクロピンホール)から酸素が侵入することがあります。品質保証の最終段階では、パッケージ(容器)状態でのOTR測定が欠かせません。
酸素透過率を測定・算出する測定原理には代表的な手法が2つあり、それぞれ対応する規格(JIS、ISO、ASTMなど)や特長が異なります。
・該当規格例:JIS K 7126-2、ASTM D3985、ISO 15105-2など
・特徴:現代の酸素バリア評価における事実上の世界標準(グローバルスタンダード)。極めて高い検出感度と優れた再現性を誇り、ハイバリア材料の評価に最適です。
【詳細な測定原理:ファラデーの電気分解の法則】
透過セルは、サンプル(試験片)を挟んで「100%酸素(または空気)で満たされたテストガス側」と「窒素が流れるキャリアガス側」に分かれています。セルの両側の全圧は等しく(1気圧)、酸素の分圧差のみによって酸素がサンプルを透過します。
サンプルを透過した酸素は、キャリアガスによってクーロメトリックセンサー(電量計)へと運ばれ、以下の電気化学反応(還元反応)が起こります。
「酸素分子1個を還元するのに電子4個(4e-)が必要である」というファラデーの電気分解の法則に基づき、反応時に流れた微小な電流値をカウントすることで、透過した酸素の絶対量(体積)を正確にダイレクト算出します。
・該当規格例:JIS K 7126-1、ASTM D1434、ISO 15105-1など
・特徴:全てのガス透過測定の「原点」。酸素以外のガス(窒素、二酸化炭素、ヘリウムなど)の透過率も同一装置で測定できるのが最大のアドバンテージです。
【詳細な測定原理:恒温下での圧力変化測定】
サンプルを挟んで、一方(高圧側)にテストガス(酸素等)を導入し、もう一方(低圧側)を真空状態にします。サンプルの高圧側と低圧側の圧力差(差圧)によって、ガスがサンプルを透過して低圧側へと漏れ出てきます。この低圧側の「微小な圧力の上昇(ΔP)」を高精度な圧力センサーでリアルタイムに測定し、理想気体の状態方程式(PV = nRT)を用いて透過率を算出します。
三洋貿易では、世界中の包装材料メーカー、食品・医薬品企業、研究機関で豊富な導入実績を持つLabthink(ラボシンク)社のガスバリア・酸素バリア評価装置を取り扱っています。
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本ページで解説した酸素透過率(OTR)の測定原理や主要規格(JIS/ASTM/ISO)の対応マップを、A4サイズ全5ページのコンパクトなマニュアルにまとめました。
社内共有や装置検討時の比較資料としてご使用いただけます。ぜひお気軽にダウンロードください。